導入事例|住友電装株式会社様|エンゲージメント・サーベイの実践的活用法(3)

役員の従業員エンゲージメント・スコアへの思考が変わり、スコアアップよりも現場での改善行動重視に変化

住友電装株式会社

古川 駿 氏(鈴鹿製作所 総務人事グループ ・入社10年目・元コネクタ事業本部担当)
竹田 駿悟 氏
(鈴鹿製作所 総務人事グループ ・入社4年目・現コネクタ事業本部担当)

1917年に電線製造会社として創業した住友電装株式会社。自動車用ワイヤーハーネスのリーディングカンパニーとして、世界で躍動するグローバル企業です。住友電装株式会社 鈴鹿製作所にて「エンゲージメント・サーベイを実施後、それをどう活用すべきか」について一緒に取り組む機会を頂きました。ワークショップ実施後の忌憚のない感想をインタビューさせて頂きました。

事業内容|自動車用・機器用ワイヤーハーネスの製造販売・ワイヤーハーネス用・電気機器用部品の製造販売・自動車用電線の製造販売
企業規模|7,141名 (2024年3月31日現在) 

導入サービス
エンゲージメント・サーベイ結果を活用することを目的としたワークショップ(全4回)
対象者:部長職

どうやって、部長層の主体性が生み出されたのか

ーー このたびのワークショップを通して、御社には「物事に対して日頃から一生懸命に取り組む社風」を強く感じました。部長層の皆さまが、真面目に一生懸命取り組まれていた印象がとても強く残っていますが、ご担当者さまから見てどのように感じられましたでしょうか。

竹田氏:社風なのか真面目な性格の社員が多いところはあると私も感じてします。特に今進めている組織開発については、外部講師に入って頂いたこともあり「やらされ感がなくなった」と実感します。

古川氏:私もそう思います。その他にも「主体性が高まった」のが印象的でした。2022年度に自社で組織開発を試みましたが、その取り組みに対しては、ここまでの理解や納得は得られなかったように思います。それこそ「人事が言っているからやりますよ」という感覚が、あったのではないかと思い返します。それと比較すると、今回は参加者である部長層の皆さんが前のめりで取り組む姿勢を感じました。それを見て「経験や成功体験に勝るものはない」と思いました。

人に行動を促す場合、その行動の経験がない人に「初めはこうしましょう」「次はこうしましょう」と説明をしても、なかなか伝わりません。 しかし、そこは伝え方や相手の持っているものの引き出し方次第だと気が付かされました。経験がないのであれば、まず「ハードルを下げた目標を設定し実行」し、その実行した中から、「成功体験を発見し内省する」ことが必要だと実感しました。結果的にそれが「主体性を高めること」につながり、これが自然とサイクル化して良い結果を生み出し続ける環境になるのだと思いました。

部長層が主体性を持って行動し始めた要因

ーー 他に、参加者の皆さまが主体性を持って動き出す要因となったことはありますか。

竹田氏:講師の存在は大きかったと思います。部長層が自分から積極的に質問するなどの行動が見られたので、彼らが講師に信頼を寄せていることがとても伝わってきました。実際にアンケート結果を見ても、最も満足度が高かった項目として挙げられたのが「講師の力量」でした。そこからも、これはとても大きな要素だと実感します。

私の中では1回目に講師の方が「包み隠さず何でも話します」と自己開示をされていたのが印象的でした。何でも話している姿を目の当たりにしたので、参加者である部長層も講師に対して話しやすさもあったのでしょう。そして、強く印象的だったのは講師が「全く強制しない」ことでした。講師が言いがちな「ここまで作り上げてください」「完成しなくても良いからやってください」など、角度を変えると強制に近い言葉が全くありませんでした。

このたびの講師は「メモでも何でも良いですから動いてみましょう」と、行動のハードルを下げ「行動し成功体験の大小に限らず内省する」ことを繰り返しました。加えて部長層がしてきた行動を、とても細かくよく見ているので皆さん安心感が生まれ、組織開発につなげるワークショップがやりやすかったのではないかと感じます。

だからこそ、あれだけ短期間だったのにも関わらず、部長層の描く方針や目的、目標が明確化され分かりやすいものに変化したのだと思います。中には、すでに「業務プロセスの改善事例」参加者から出るなど、とても効果的だったことを改めて実感します。

このように今回のワークショップでは講師から強制され実行するのではなく、ほんの少しの一歩でも良いので主体的に行動すること促され、安心感のある環境の中で参加者も実行をしました。それが背景となり、業務プロセス改善の事例もたくさん出ていたことから、このような積み重ねの結果がエンゲージメント・スコアの向上につながるのではないかと実感しました。

役員もエンゲージメント・スコアへの考えが変容

ーー このたびのワークショップを通じて部長層が変化しましたが、役員の皆さまの反応はいかがでしたでしょうか。

古川氏:「組織開発を実行します」と役員に提案したときは、当然のことながら「1年後の成果は、どのようなものを想定しているのか」「エンゲージメント・スコアは向上するのか」など短期的な成果を期待する質問が多くありました。

しかし、ワークショップ実施後は「成果創出に向けて中長期的な視点が必要なこと」「エンゲージメント・サーベイのスコアに一喜一憂するのではなく、具体的な行動の変化・課題の解決に注目するのが大切であり、その副産物としてスコアが向上する」ということに考えが変化しました。

ワークショップを重ねる中で、参加者である部長層から多数の改善事例が発表されましたので、それも役員に報告しました。するとさらに「部長層が改善に向け動いている内容を理解し、それが組織の成果に大切である」とありました。その言葉からも、組織開発を目的としたこのワークショップの中身や、組織開発の根幹である考えも伝わったのではないかと考えます。

なぜこの組織開発のアプローチ方法は効果的なのか

ーー 今回のワークショップは、組織内の直接関連する上位層・同僚・下位層だけでなく間接部門も含めて協力いただく必要がある組織開発のアプローチでした。このアプローチ方法をご体験いただき、どのようにお感じになりましたでしょうか。

古川氏:ワークショップに参加した部長層全員だけでなく、様々な人を巻き込んだアプローチ方法を今回初めて体験しました。これに対して役員からは「組織変革を行うときには、全員でやるようなことが大変重要である」と評価がありました。このようなワークショップは、同じ階層でも参加している人と参加していない人の分断が起きがちです。次に参加している人の中でも、実行している人と実行していない人の分断が起き、ときにはお互いの足を引っ張ることもありました。

今回は同じ階層の全員がワークショップに参加しています。これにより出だしの一歩につまずくことがなかったので、ワークショップ内で考えたことを着実に実行していく姿が大変よく見られました。だからこそ、このワークショップでは、参加者の皆さんが毎回ドキドキやワクワクを持ちながら参加でき、全体として良い方向に進んだのではないかと考えます。

竹田氏:私もそれを強く実感しました。部長職はワークショップから離れるとどうしても孤立しがちです。しかし、ワークショップの回数を重ねるごとに、この場で同じ階層の人たちと会えることで「仲間がいる」と感じられたのではないかと思います。 例えば、参加者の部長からは「隣の部署の部長は上手くいっているように見えていたが、話を聞くと同じような悩みがあることを知り、仲間意識を持つことができました。」「自分だけが上手くいっていないのではないかと焦っていたが、そのような点を共有し共感しながら解決に向けて一緒に考えられることを嬉しく思いました。」という声もありました。

「働きがい」の向上に効果的だと実感したこと

ーー 最後に一連のワークショップを終えて、改めて実感することがありましたらお聞かせください。

古川氏:今回のワークショップは、導入の前段階から実感することがありました。具体的には「組織開発の定義」です。ひと口に組織開発といっても、その定義は難しいものです。もしくは、何となくは同じだが、各々ずれているようなものかもしれません。

それに対して、今回はワークショップ導入以前に「組織開発の定義」を丁寧に説明していただきました。その定義により、これまで曖昧な部分が残されていた定義が明確化され「より良い成果を出す組織に成長するには、この組織開発の方法は実行しなければない」と考えるようになりました。これにより以前にも増して組織開発を実行することに納得感が生まれ「よし、これを進めていくぞ」という流れができました。

また、これと同時に強く納得したことがありました。それは「エンゲージメント・スコアはあくまで結果であり、それは目的ではない。本来は“マネジメントの質“を高めた結果としてスコアが向上するものである。仕事の基本である「目標を設定(Plan)→業務を遂行(Do)→振り返る(See)の業務プロセスの質を徹底的に高める。その結果、エンゲージメントや業績が高まる。」という話でした。

社内では「働きがいを向上させよう」という話が出ていました。しかし、これはここを目的に施策を打つのではなく、あくまでもマネジメントの質の改善や業務プロセスの質の改善を行なった結果から得られるものだと分かりました。

この話は、第1回目のワークショップでも参加者である部長層の皆さんに詳しく説明がありましたので、同じように納得感が高まったと思われます。その結果、参加する姿勢も高まり全体として良い流れで進められたのだと改めて考えます。

古川氏:「エンゲージメントを高めよう」と言われても「どう高めるのか分からない」となるのが、ワークショップ導入以前の状況でした。それが今回はワークショップ導入前から「組織開発の定義」「組織開発の全体像」「マネジメント業務や業務プロセスとエンゲージメントの関係性」など、その根拠から改善の道筋までを丁寧に解説してもらえたので「これをやれば上手くいく」という光が見えました。

まさに、仕事とエンゲージメント、仕事と働きがいの結びつきが見えてきたように思います。おそらく、自社で行なった組織開発ではこの辺りにまで上手く辿り着けなかったのだと振り返ります。そういった意味も含めて、私自身も大変勉強になりました。

ーー 非常に貴重なお話を頂戴しまして誠にありがとうございました。私たちも今回の経験や話を活かして、今後も組織開発の活動に取り組んでいきたいと思います。